【SICK’S】内閣情報調査室と警察の複雑な関係【SPEC、ケイゾク】(続:「トクム」と「未詳」「ケイゾク」の決定的な違い)

【SICK’S】「トクム」と「未詳」「ケイゾク」の決定的な違い【SPEC、ケイゾク】という記事で『SICK’S』の部署が属する内閣情報調査室と『SPEC』『ケイゾク』の部署が属する「警察」というものの違いを現実の制度に即して記載したところだが、実際にはさらに、これらの組織には複雑な関連性があるので、ドラマからは離れるが、これまた現実の制度に即して記載していきたい。
まずは基本的なところから押さえていきたい。


【警察庁と警視庁】
警察庁は、国家公安委員会の下に置かれた、警察制度に関する国の行政機関で、警察制度にかかる企画立案であるとか、国の公安に係る警察運営、広域組織犯罪への対処、犯罪統計など、警察行政を司る。それに、科学警察研究所や、皇宮警察本部といった組織が置かれている。
警視庁は、東京都の警察組織であり、他の道府県警察と違って「警視庁」という特別な名前が与えられているのは、管轄するのが日本の首都であることによる。
警察庁と警視庁(やその他道府県警察)は、もちろん関係ない訳ではなく、警察庁から広域組織犯罪等に対処するための指示を与えたり、警視庁から警察庁への援助の要求がなされたりと、連携して国の警察を担っている。
また、警察庁から警視庁への出向職員というのもいる。
【キャリアとノンキャリア】
警察官においては、次のようになっている。
キャリアは、国家公務員総合職試験に合格し、警察庁に採用された警察官で、階級は警部補から始まる。
準キャリアは、国家公務員一般職試験に合格し、警察庁に採用された警察官で、階級は巡査部長から始まる。
ノンキャリアは、都道府県の警察官採用試験に合格し、都道府県警察に採用された警察官で、階級は巡査から始まる。
そして、出世スピードもそれぞれ異なっている。
とある本によると、例えば、警視正になるのはキャリアの場合33歳〜34歳、準キャリアの場合43歳〜44歳、ノンキャリアの場合50〜53歳程度、とある。
もっとも、警察庁から警視庁に出向した警察官というのは、ほとんど現場で捜査を行ったりすることはないようだ。例えば、刑事ドラマならほとんどと言って良いくらい登場する、捜査一課長は、ノンキャリアのポストである。
劇場版『トリック』で、キャリア警察官が「私は、警察官ではない、警察官僚だ」と言ったのはそれを現している、と考えていいのだろうか?
【都道府県警察なのに国家公務員】
警視庁をはじめとする都道府県警察の警察官は、当然ながら地方公務員であるのが原則である。
しかしながら、警察官においては例外があり、警視正以上の階級にある警察官は、国家公務員の身分になる。これを地方警務官という。
上記のノンキャリアの警察官についても、地方警務官になったものは、「特定地方警務官」と呼ばれ、国家公務員の身分になる。言い換えると、警視庁をはじめとする都道府県警察の警察官であっても、警視正以上の階級にある警察官の給与は、国が支払うということになる。
【内閣情報調査室の職員】
内閣情報調査室は、「警察」とは別個の組織と言いつつ、内実は異なる。
Wikipediaにも記載されているが、衆議院安全保障委員会の平成17年4月8日、政府参考人内閣官房内閣審議官の答弁で、「平成十七年四月一日現在、約百七十名の体制」で、「構成は、内調プロパーの職員が約七十名、警察庁からの出向派遣者が約四十名、公安調査庁からの出向派遣者が約二十名、防衛庁からの出向派遣者が約十名、そのほか外務省、総務省、消防庁、海上保安庁、財務省、経済産業省等から若干名を受け入れて」いる、としている。
ここで言う、「内調プロパー」というのは、国家公務員試験に合格して、内閣情報調査室に採用された職員のことを指すわけであるが、その内調プロパーの職員の半分ほどの人数の職員が、警察庁からの出向職員として所属している。
そして、内閣情報調査室のトップである内閣情報官も、歴代、警察庁からの出向者となっている。
ほとんど警察庁の出先機関といった様相を呈している。
刑事ドラマの世界でも、『相棒』で仲間由紀恵さんが演じた社美彌子は、警察庁入庁後、内閣官房内閣情報調査室に出向した過去がある。
『SICK’S』において、御厨静琉や、野々村光次郎が、内調プロパーなのか、警察庁のような他省庁からの出向者なのかは定かではない。『SPEC』に登場した青池里子は、警察からの出向であったようだ。
また、他にも『ケイゾク』や『SPEC』に登場したキャリア警察官が、その後、内閣情報調査室に出向になったとしてもおかしくないのではないかと個人的には考えている。

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