以前、暴排条例(東京都暴力団排除条例)についてという記事で東京都暴力団排除条例を取り上げた。
前回は、『ヤメゴク』第壱話、第弐話の、暴力団に対する禁止行為について書いたが、今回は、第参話に出てきた、一般事業者に対する部分をのべる。
前回と同じく、このリンクを見れば一目瞭然である。などと無責任なことを書くと記事にならないので今回が暴排条例のどの条文が適用されたのかというところを考える。
麦秋が、暴排条例の「第一条で市民の責務を明らかにするための条例だとうたっています」とのべているが、実際の条文ではどうなっているかというと、
この条例は、東京都(以下「都」という。)における暴力団排除活動に関し、基本理念を定め、都及び都民等の責務を明らかにするとともに、暴力団排除活動を推進するための措置、暴力団排除活動に支障を及ぼすおそれのある行為に対する規制等を定め、もって都民の安全で平穏な生活を確保し、及び事業活動の健全な発展に寄与することを目的とする。
とされている。
東京都の条例なので都民等になっているわけだが、それはともかく、第一条は一般条項なので、具体的な都民等の責務が定められているわけではない。
都民等の責務ということで、条例の第三章(第十五条〜第二十条)に、都又は暴追センターへの情報提供、契約時の相手方が暴力団関係者かどうかなどの努力義務が定められている。しかしこれは努力義務である。今回出てきたのは、第二十四条の禁止行為に関する部分である。
第二十四条第一項では、暴力団の威力を利用することを目的としたことの対償とした利益供与を禁止している。これらの行為をおこなうと、一発で公安委員会からの勧告の対象となる。
これに対して、第二十四条第三項の、威力目的以外で、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなることの情を知って利益供与を行なった場合は、第二十八条に救済手段があって、公安委員会の勧告前に、利益供与の事実の報告と、今後そうした行為を行わないという誓約書を提出すれば、勧告の適用を受けないということになっている。
なお、勧告を受けて1年以内に同様の行為を行なった場合、その事実が公表されるという流れになるのは、暴力団に対する場合と同じである。
ドラマで、「報告」と言っていたのが東京都暴力団排除条例施行規則に規定のある「事実報告書」のことで、麦秋が持っていた「誓約書」とは、東京都暴力団排除条例施行規則に規定のある様式そのものである。
こうやって見ていくと、このドラマが本当によく法律監修ができていることがよく分かる。こうやってリアリティを積み重ねた上に乗っているからこそ、現実離れした設定やキャラクターが生きてくるんだと思う。