【ケイゾク】柴田純とボーヴォワールと中谷美紀

ケイゾク8話で、次のようなセリフがある。
「ボーヴォワールとボードレールの違いはなんだか知ってますか?」
シャルル・ボードレールは、フランスの詩人。シモーヌ・ド・ボーヴォワールは、フランスの女性哲学者。
柴田純という人物は、第1話のスタンダールもそうだが、フランスに縁が深いが、ここでは柴田がボーヴォワールに言及したことについて考察したい。
ボーヴォワールの代表著作、『第二の性』は、「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という冒頭の文で有名だが、「女性」という性が、男性社会によって作られたもので、少女から大人になり、妻になり、母となるという女性の生き方も、男性によって定義されたものだということをのべている。
1949年の著作であり、女性の社会進出は進んだかのように思われるが、いまだに職業社会は男性社会であり、労働力としての女性は従属的なものが多くを占め、男性並みの社会的地位を得るために、「女性」としての生き方を捨て、カッコ書きの「男性」として男性社会に参加する女性が多いように感じる。
さて、柴田純である。
ドラマのなかで、何度となく、エリート警察官として、出世の道を歩んでいくことが示唆されている。
それは、柴田純自身が、国家公務員試験を受けて、警察庁に採用されるという道を選んだからにほかならない。
しかし、ドラマのなかの柴田は決して「男性」ではなく、純愛を信じ、ダンナ様が現れるのを待ち望む女性だった。
そういうふうに考えていくと、柴田が「女性」として「エリート警察官」の道を選んだことの背景の一つに、ボーヴォワールの思想があったのか、と解することもできるのではないだろうか。
しかしながら、台本にはこのセリフは全くない。
一体誰が考えたのだろうと思っていたが、植田Pによると、中谷美紀さんのアドリブ、とのこと。
私が書いたようなことを、中谷美紀さんが意識していたかはわからないが、柴田純が、このセリフを中谷さんに言わせたように思う。

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