さて、月は無慈悲な時の女王 パート2で予告した続きである。
『真田丸』と月について、しばらく書いているところだが、第7回でも気になるシーンがあった。
それは、滝川一益が真田らの人質を木曾義昌に引き渡した日付「6月28日」をナレーションしていた後のシーンである。
これも旧暦の28日で、月が見えなくなる時期なのである。
その後、真田昌幸と上杉景勝が交渉するシーンの後、信繁ときりのシーンに満月が出ており、きりの「きれいなお月さま」というセリフもある(ちなみにこの一連の月のシーンは再放送でもカットされなかった)。
よって、また旧暦に沿って考えると、半月ほど時間がジャンプしたのか、とも考えられ、史実と比べてみた。
すると、7月9日に昌幸は上杉から北条に降り、7月12日に川中島で北条氏直と上杉景勝が対峙するが、決戦とはならず北条は甲斐へ、上杉は8月9日に越後へ向かう。昌幸はこのときしんがりを務めて上杉に対峙している。以上が史実である。
これに対して、第8回では、日付に関する記述はでてこないものの、概ね上記に沿った形でストーリーが進行する。そして、「雲間からでる満月」の描写が、川中島で北条と上杉の対峙が解けたあと、信繁が真田の里に帰ったあとに挿入されている。ここは、7月15日の満月近くの月と考えられる。また、北条と上杉の対峙に先立つ春日信達殺害シーンで、書状が月明かりに照らされているので、7月12日に近いのがわかる。
ここからすると、第7回に出てきた月のことである。7月15日頃には、真田信繁は川中島におり、第7話の満月に相当する旧暦の日付が存在しないということになる。
そうすると、第8回で日付の言及がなかったことも合わせて考えると、この『真田丸』においては、今後「月」は「旧暦の日付」としてのアイテムではなく、演出上の効果のみを持たせたアイテムであることを明言したということになるのだろう。