『ケイゾク』について、映像で説明されていない視点で、あるいは勝手に補完をして見ようと思う。
今回は、第七話『死を呼ぶ呪いの油絵』についてである。
この回は、ずっと築き上げて来た柴田と真山の関係の完成形が見られる回であると同時に、それが崩壊する回である。
柴田が謎解きをし、真山が犯行の動機を解き明かす、というのが、これまでのパターンだったわけだが、この回の最後でそれは崩壊する。
確かに、平良文弘殺害については、柴田が謎解きをする。しかし、1993年の山田菜穂子の父の事件については、柴田の推理は外れる。また、山田菜穂子の犯行の動機についても、真山は「絵の値段をつり上げるため」と言うが、菜穂子に「表面的なことしか分からない」と言われてしまう。
こうしていままでの方程式を崩すことで、第八話以降、本格的には第九話以降の怒濤の展開に持って行くためのインターミッションとなっているのである。
この、山田菜穂子という人物について、非公式研究本『ケイゾク/攻略読本』の解説が、私の全く読み取れなかった部分で、なおかつ納得のいったものだった。非常に素晴らしいので、引用する。
最終話、柴田は、真山が早乙女に撃たれてはじめて、殺したいほど人を憎む気持ちがわかった、と感情をあらわにすることになるのだが、おそらく自分と同種の人間である山田菜穂子の服毒自殺が、彼女の正常に働いていない人間的な感情を揺り動かすファーストインパクトになったのではないだろうか。
(中略)
年齢が同じ二四歳ということ、同じ水筒を持っていることなどの共通点を設定されて、菜穂子は柴田の比較対象物となっている。そしてやはりある種共通する感情音痴。
いろんな意味で自分に共通部分を持つ菜穂子は、柴田にとって、特別な存在の犯罪者となったのではないだろうか。
この回の見せ場である柴田と真山の掛け合いだが、意外と台本に書かれていない部分が多い。
・弐係で柴田が、「私たちにお任せください」と言った後の、真山の方に振り返って「ねっ」とウインク。
・柴田「真山さんは私のタイプじゃないです」真山「撃つよ。銃で撃つよ」
・真山、逃亡を図るが、コケる。「あれ?あれ?真山さん、大丈夫ですか」
・真山「お前の頭もにおいます」
・柴田が「油彩とか水彩とかアクリルとか」と言った後の、真山が柴田の頭を手袋で叩く
・マネージャーの菊地に身分を問われた後の、二人で警察手帳を探すが見つからない
・絵の値段が2千万するのにビビる真山と柴田
・柴田スペシャルを真山についだあとの、真山が柴田の頭を手袋?で叩く
・柴田の頬をつねる真山
・絵の臭いをかいでいる柴田の頭をスリッパで叩く真山
・真山「何だよなれなれしいんだよ」滋「仲がやっぱりおよろしくて」柴田「はい」
ところで、この回のトリックも無理がありすぎである。
・平良文弘が帰国した日に、菜穂子が架け替えた賽の河原の絵を見ており、なおかつ、その後、柴田たちが子どもが遊んでいる絵を見るまで、平良が絵を一度も見ないこと。
・絵が変わったと言って動揺した平良を、絵を架け戻しに行った菜穂子が柴田たちよりも先に発見すること。
・菜穂子が平良を海に突き落として、ザバーン!とかなり大きな音がするが、柴田も真山も気づかない。
・工事の音で聞こえなかったとしても、工事現場の作業員に全く目撃されない。