ときどき、『SPEC』と『トリック』は同じ世界の話だという説をSNSなどで見かける。このことについて、検証してみようと思う。
まず、『SPEC』と同じ世界である『ケイゾク』も含めて、関係を整理する。
スタッフ
どの作品も、堤幸彦監督がチーフ演出であるということは変わりがない。『ケイゾク』と『SPEC』は西荻弓絵さんが脚本なのに対して、『トリック』は蒔田光治さんをはじめとする数人の方が脚本を執筆している。蒔田光治さんは『ケイゾク』には「企画協力」というクレジットで関わっているが、『SPEC』には関わっていない。
また、カメラマンは、『ケイゾク』が唐沢悟さんと斑目重友さんのふたりが担当しているが、『SPEC』と『TRICK』は斑目重友さんのみが担当している。
以上のように、三作品では、スタッフの関与が複雑に入り組んでいて、作風が似てきている面がある。
ただ、スタッフが共通しているだけで、同じ世界の作品とは言われないのであって、おそらく、同じ世界の作品と呼ばれるのは二つの理由があるだろう。
テレ朝通り
一つは、SPECの第1話に出てくる「テレ朝通り」である。未詳の下のフロアに存在して、テレビ朝日の刑事ドラマに出てくる刑事のそっくりさんがたくさん出演していたシーンで、その中に、『トリック』の矢部謙三が出ていたから、『SPEC』と『トリック』は同じ世界だという理論づけである。
SPECホルダー
もう一つは、トリックの劇場版ラストステージで、「SPECホルダー」というセリフが登場したシーンである。トリックにもSPECというものが存在したのだから、『トリック』と『SPEC』は同じ世界だという理論づけである。
検証
この二つを検証すると、理論として成立しないのではないかということである。まず、「テレ朝通り」の件だが、おなじ理論でいくと、『相棒』だの『時効警察』だの『臨場』だのの刑事のそっくりさんも登場していたのだから、全ての刑事ドラマが同じ世界だということになってしまう。そもそも「テレ朝通り」という名前からしてお遊びであることは明白だ。
次に、SPECホルダーの件だが、実際には、「SPECホルダー」と字幕で打ち消し線付きで表現されていただけで、『SPEC〜結〜』と『ラストステージ』の公開時期が近かったことを踏まえたお遊びであることは、明白だ。
キャスト
『SPEC』と『トリック』は、同じ俳優が違うキャラクターを演じている例が非常に多く、逆説的に、別の世界だという理由になっている。もっとも、同じ世界であるはずの『ケイゾク』と『SPEC』のおいても、一部そう言った事例があるわけだが。
わざわざ記事にするほどの内容でもないが、否定しないと、それがほんとうのことのように流布されてしまうのを見過ごすことになるわけだから。