今更の話題ではある。
『ケイゾク Blu-ray BOX』に収録されている、『ケイゾク/映画』の初日舞台挨拶後インタビューで、堤幸彦監督が、「頭くせえよって有名なセリフがあるんですけど、これはもう渡部さんのアドリブです」と言っているのだが、どういうことだったのか、検証してみよう。
初めて「頭臭い」ネタが登場したのは、第3話『盗聴された殺人』である。
弐係で被害者の部屋を張り込みしているシーン。
(スピーカーのノイズ)
柴田「どうしたんですか?」
真山「お前の頭どうしたんですか?」
柴田「はい?」
真山「臭いよ、お前。頭洗ってないだろ?」
頭を押さえる柴田
近藤「シーッ」
ところが、台本ではこうなっている。
ザザ、と聞き取りにくい雑音。
近藤「ん?(と、盗聴器を操作して)……」
柴田「(どうかしたんですか?)」
近藤「シッ」
と、「柴田の頭が臭いくだり」がまるまるカットされている。
これが、4話の台本では、
真山「お前さ、いつも風呂入ってないだろ。な」
柴田「いや、入ってますよ」
真山「昨日、入ってないだろ」
柴田「昨夜はちょっと….忙しくて」
真山「おとといは?」
柴田「……(考えてる)」
すでに3話の「アドリブ」が台本に反映されている。
さて、「頭臭い」でもっとも印象に残るシーンといえば、最終回の真山が柴田を抱きしめて、「頭臭い」といって泣くシーンだと思うのだが、これも台本にはないのだ。
柴田、笑顔のまま、真山に敬礼。
真山「……」
柴田「……」
柴田のその手、力尽き……。
真山「……柴田……」
真山「柴田……柴田ー!!」
見守る野々村。
近藤。
林田。
長尾。
斑目。
そして刑事たち。
真山の腕の中で、眠る柴田。
「眠る柴田」と書いてあると、柴田は死んでいない、というメッセージが伝わってくるが、映像化されると、渡部さんのお芝居が付け加えられたことで、柴田はどちらかといえば死んだ印象寄りの生死不明、という印象を覚える。
一連の渡部さんのお芝居は、渡部さんのアドリブ、というわけではなく、現場でお芝居をつけたということだと思われる。