『ケイゾク』について、映像で説明されていない視点で、あるいは勝手に補完をして見ようと思う。
今回は、劇場版『ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer』についてである。
この映画について、夢なのか、現実なのか、いろいろ取りざたされている。
東宝ロゴ(DVD/Blu-Rayは別)にかぶさるかたちで柴田の「ダンナ様!」の声が聞こえ、サバ男が『ケイゾク』最終回の『ケイゾク/映画』偽予告編を見ているところから映画は始まる。サバ男は、映画の冒頭とラスト(偽予告編のあと)のみに登場することから、『ケイゾク/映画』の外に位置するキャラクターととらえることもできる。あるいは、サバ男が『ケイゾク/映画』の劇中登場人物だとすると、映画の世界は、連ドラのケイゾクが「ドラマ」として放送されている世界に位置するとも考えられる。つまり、連ドラが劇中劇と言うわけだ。
さらに、朝倉の背中に、『ケイゾク/特別篇』の映像が映し出されるシーンがあるわけだが、これも同様に、『ケイゾク/特別篇』も『ケイゾク/映画』の劇中劇であるとも取れる。
柴田が「養女」で、実の父親は幼いときに殺されたという設定が映画で登場し、また、特別篇で柴田の見た幻覚に登場した柴田の父親と映画に登場した柴田の父親は別人であったようだから、ドラマと映画は別の世界なのかもしれない。
また、『ケイゾク シーズン弐』の偽予告編では、 「監督 堤」「プロデュース 植田」なる肩書きの人物(堤監督と植田プロデューサーなんだが)が登場しており、現実世界とフィクションの世界が交錯している。
それはともかく、『ケイゾク/映画』は、第一話から最終話までの流れと同じである。
①弐係に柴田純が配属。
②依頼人が現れる。
③柴田が行きたいと言い出し、真山も無理矢理ついていかされる。
④現場で次々と殺人事件が起こる。
⑤犯人を騙すために、犯人にトラップを仕掛ける。
⑥真犯人を見つける柴田。しかし真犯人の思いが朝倉と共鳴してしまう。
⑦朝倉との戦い
ざっと描くとこんな感じであるが、前半の謎解きの部分と、後半の朝倉復讐ストーリーの2本立てが映画でも展開されている。
『SPEC』は次々とストーリーが展開していったわけだが、『ケイゾク』ではシーズン壱、特別篇、映画と、最初に戻って同じ流れを繰り返している。あたかも続編のようでもあるし、パラレルワールドのようでもあるし、劇中劇のようでもある。まさに、「曖昧な記憶の集合体」である。
【なぜか気になる小ネタ&つっこみ】
・弐係で柴田が磯山章子に「私が責任者です」と言ったときに吹き矢を柴田に飛ばすが、今となっては『SPEC〜翔〜』を思い出すわけである。
・第七神竜丸の事件の資料を調べている柴田が、「七海は長女か…」とつぶやくが、霧島七海(小雪)に双子の妹がいることを知っていたということになる。そうすると柴田は、最初から事件のからくりを知った上で動いていたのか?
・もっと言うと、幼い頃に厄神島のことを教えられて、ずっと調べていたとか?
・野々村の元に届いた霧島七海の招待状。「総務未封」「強行犯未封」「一係未封」「庶務未封」とゴム印が押してある。総務部→刑事部(庶務)→強行犯捜査一課→捜査一課一係→と回ってきたのだと思われるが、警視庁ではやはり、不審物とかあるだろうから郵便物一つも慎重に取り扱ってるってことだろうか。ちなみに、警視庁の住所が現実の警視庁と違っている。架空の「霞が関4丁目」となっていたが、ここまで架空にする必要があるのだろうか。
・今さらながら、柴田弐係長の机に段ボールで作った机上札があるのに気づく。
・奥さんに「腎臓売れ」と言われていた健康体の野々村係長が、10年間で糖尿病になったのはやはり解せない。糖尿病が悪化すると腎臓を悪くするわけで。
・野々村係長と妻のシーンのラストに、『SPEC』3・7話の演出の加藤新さんが出演している。
・喜多と七海のシーン、実際に起こったことではないフェイクシーンなのが後に分かるのだが、ミステリーでフェイクを見せるというのはほとんど禁じ手ではないか。
・柴田の謎が全て解けたシーン、今見ると『劇場版SPEC〜結〜漸ノ篇』の冒頭を思い出すわけである。
・劇場で見たときは非常に見にくいのだけれども、流れで映像を補完せざるを得なかったシーンがあった。柴田のグレーのカメオが、石畳の上に落ちているシーン。サンゴ礁の陰を真山が覗くと沙織が見えるシーン。
・紙相撲の力士、「大鵬×柏戸」「てんや×わんや」「猿取?×判別不能」「高中(正義)×(井上)陽水」
・お城のあちこちにあるランプ(と書いておく。正式名称が分からない)、七海が死んだあともともされているが、誰が保守していたのだろう。
・真山と沙織の回想シーンが多分、2秒ぐらいしかないのは『ケイゾク/映画』の美学のように思う。
・『SPEC』が地球滅亡で散々言われたが、『ケイゾク/映画』も似たようなことをやっているではないか。
【余談】
冒頭で近藤がPCで調べていた「警視庁マネーファイル」
1 年度別キャリアとノンキャリアの初任給移り変わり
2 警視庁階級別給与リスト
3 警視庁階級別退職金リスト
4 警視庁内、高額納税者トップ10(過去10年迄)
5 ’99年度警視庁特殊車両維持費
6 ’99年度捜査一課弐係個人別必要経費リスト
7 捜査一課弐係個人別給料ランキング
8 柴田警部、遅刻による罰金制度があったらいくらになるかリスト
9 真山警部補、給料前借り累積リスト
10 野々村警部、年間柿ピーをどれだけ買ったかリスト
真山、給料前借りして何を買っていたのだろうか。やはり「すっぽんの粉」だろうか(笑)
実際の警視庁の職員は、どれくらいもらっているのだろう、と思ったら、2011年だが、凄い額。平均年齢の39.8歳は『SPEC』での柴田警視正がこれに近い年齢であるが、柴田はキャリアであるので、月収60万以上もらってるわけだ。さすが東京警視庁。