さて、前回の記事の続きである。
改めて疑問点を再掲する。
ユイが仙台に着かなければいけない時間「5時半」である。
3月11日の17時30分に仙台に着かなければならない、という意味のことを言ったのだと思われる。
それは可能であろうか。
これについては、検証するまでもないが、当時の時刻表で確認しておく。
ユイが乗った列車に近い列車は、久慈駅発14時12分発宮古行きで、宮古に15時47分到着予定。その後、
宮古(15:55発)-山田線-(17:10着)釜石(17:15発)-南リアス線-吉浜(17:32発)-南リアス線-(18:03着)盛
と、仙台どころか、17時30分には盛にも到着できない。
このまま行くと、
盛(18:49発)-大船渡線-(19:54着)気仙沼
気仙沼線の終電は、19時23分なので、もうこの先まで行けない。
なお、盛18時49分発の列車は、気仙沼から一ノ関に直通し、21時37分に到着する。一ノ関22時31分発のはやて96号に乗れば、23時04分に仙台に到着することができた。
そもそも、「5時半に仙台」というのが、何だったのかがわからない。
また、現実の被災状況については、国土交通省東北運輸局の「よみがえれ!みちのくの鉄道」第2編3章 三陸鉄道が詳しい。
(この情報を知ったのは、『あまちゃんデータブック unofficial – 東京編・復興編』による。感謝)
これによると、三陸鉄道北リアス線では1本の列車が走行中だった。前に述べた久慈駅14時12分発宮古行きで、白井海岸駅を定刻の14時46分に発車した直後であった。震災発生に伴い、白井海岸駅と普代駅の間の山中に停車する。乗客15名は、普代消防署の車両により普代村の避難所に、あるいは、三陸鉄道の社用車が自宅に送り届けたという。
ドラマでは、春子のナレーションで、「運行だった北三陸鉄道リアス線の車両は2台。1両は、海に迫る高台で止まり、もう1台は畑野トンネルの中」そして、高台で止まった車両が「奇跡の車両」と呼ばれることになったと説明されている(「両」と「台」はドラマのなかでの用法ママ)。
有名な話なので詳しくは書かないが、現実では南リアス線を走行中だった車両がトンネル内で停車し、のちに「奇跡の車両」と呼ばれることになる。
ドラマは、現実の出来事をアレンジして取り入れている。