『ヤメゴク』第1話の中で、暴力団排除条例、通称「暴排条例」がしばしば取り上げられた。
そこでこの、東京都暴力団排除条例について、ドラマと実際の条文を照らし合わせてみた。
まず、東京都暴力団排除条例(暴排条例)とはどんなものなのか、このリンクを見れば一目瞭然である。以上。
というわけにはいかないか。
とりあえず、一つ一つドラマのなかでの事例に即して説明する。
◯倉持一家が申川土木の名を使って公共事業を行っていた件
この場合は、暴排条例の第25条、第27条、第29条が適用された。
第25条には、暴力団員であることを隠蔽する目的で、他人の名義を利用してはならないことと、何人もそのことを知って暴力団員に自己の名義を利用させてはならないことが規定されている。
これに違反した場合、第27条により東京都公安委員会は違反行為が行われないよう防止するため必要な措置をとるよう勧告することができる。
さらに、この勧告に従わなかった場合、第29条第1項第6号により、第27条の勧告を受けてから1年以内に第25条に違反する行為を行った場合、その旨を公表することができる、と定められている。
三ヶ島が水原と飲んでいるときに、いきなり公表はできないということを言っていたのはこのことである。違反→勧告→一年以内に再度違反→公表、というのが流れになっている。
◯マンションが解約された件、銀行口座が凍結された件
この事例は、実は暴排条例と直接関係するところではない。
暴排条例の第18条に、事業者が契約する際、契約の相手方が暴力団関係者であると判明した場合、事業者が催告することなく契約を解除できるような条項(暴力団排除条項)を契約書に定めるように努めるものとされている。
また、第19条〜第20条に、不動産の譲渡・貸付けに関する条項が並んでいるが、これは暴力団事務所として使用する不動産に関しての条項である。
第18条に違反した場合どうなるかというと、暴排条例では何も定められていない。なぜかというと、これらの契約は、民間同士の取引であるので、民事不介入という鉄則が働くためである。
しかし、こうした取引が放置されているわけではない。
平成24年版犯罪白書に記載があるように、全国銀行協会が会員銀行に対して、平成23年6月に暴力団排除条項の導入を要請。不動産関係5団体が会員に対し、平成23年9月までに契約の当事者が暴力団員等反社会的勢力でないことを確約する条項や買受不動産を暴力団事務所等に使用することを禁止する条項等を盛り込んだ契約書のモデルの導入を要請、といったことを行っている。
例えば、ソニー銀行のサイトにあるような条項である。不動産取引の契約書についても同じような条項が掲載されているだろう。
◯病院での退去要求
これについては、暴排条例には禁止条項はない。暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、通称暴力団対策法の第9条第1項第13号の違反行為に近い。しかし、「指定暴力団等の威力を示して」することが禁止されているとされているから、微妙なところである。また、罰則は、同法第46条に規定があるが、法第30条の8の第1項で定められている警戒区域内でないと直接は適用されない(公安委員会による中止命令→違反した際に罰則が適用される)。
そもそも、こうした行為は、刑法上の脅迫罪や威力業務妨害罪に当たるか。暴排条例を持ってこなくても。