2014年4月から放送されたドラマ『BORDER』のBlu-Ray BOXが発売された。
本編ディスクが5枚で、Disk 1からDisk 4までに第1話から2話ずつ、Disk 5に第9話が入っている。
『SPEC』や『ケイゾク』のBlu-Rayが1枚のディスクに4話入っているのと比較すると、贅沢な構成だが、DVDに合わせたということか。
そしてDisk 6には、特典映像として、第1話と第3話のノーカット完全版や、インタビューなどが収録されている。
映像は、フルHD・1920×1440ピクセルではなく、1440×1080ピクセルの素材をアップコンバートしたのか、画質は少し良くない。また、日本語字幕表示が当たり前になっているところ、字幕表示がないのは不満なところだ。
第1話から第9話まで通しで見たので、気になったシーンやセリフを記しておく。
第1話「発現」
・石川が今までどんな刑事だったのかの描写は最低限に留めて、いきなり石川が撃たれる描写と撃たれるに至るまでの経緯から描いている。
・死者が見える際の演出も、この回では派手。
・この時点では石川をライバル視する立花。
・「子供部屋に行くのは気が重いな」別の意味で気が重い石川。
・ベートーベンではなくサンサーンス(余談だが無学なおーちゃん!はチャイコフスキーの『白鳥の湖』と混同していた)。
石川「頭にひどい怪我を負った人間が幻覚を見るのって、一般的な症状なのかな」
比嘉「一般論では答えられないよ。患者を目の前にして具体的に調べてみないと。外傷的なものじゃなくて精神的な疾患かもしれないし」
石川「そうだな。分かった。この話は忘れてくれ」(帰りかける石川)
比嘉「あくまで、(立ち止まる石川)例えばの話だけど、東武に銃撃を受けて脳の中に弾が残っている人だったら、あり得るかもね。激しい戦場から戻った帰還兵と同じで、心と体に相当のトラウマを抱えているはずだから。」
石川「…弾が脳に何らかの影響を与えて、幻覚が見える可能性は」
比嘉「それは摘出してみないと分からない。もし取り出したあとに症状が治まれば、弾が犯人だったってことになる」
石川「…」
比嘉「あのね、脳科学はまだ若い学問だから、脳の働きについてはっきりと答えることなんて誰もできない。もしかしたらって、仮定の話ならできるけど。もしかしたら、あんたの頭の中の弾は人間がいつしか使わなくなった脳の何らかの機能のスイッチを押して、幻覚を見させているのかもしれない。もしかしたらそうじゃないのかもしれない。」
石川「そのどちらかは誰にも分からない」
比嘉「その通り」
石川「分かった。ありがとう。このことは…」
比嘉「私はこう見えて医師免許を持つ医者だから。患者の情報を漏らさないわ」
石川「患者かよ」
比嘉「面白い症状が出てきたら教えてね。ただで診てあげるから。電気消してね」
このとき、というかこのあとも何回も石川は死者が見えることを話す機会があったと思うのだが、もしそうしていたらどうなっていただろう。
・石川と赤井のファーストコンタクトも見ごたえがある。「うちには決してけがれない若い衆がいる。確か、石川とか…」
・犯人がFacebookをやっていてプロフィール写真で面が割れるというのが「現代的」
・エンドロール中の事件、第2話の事件とは違う。第1.5話?
第2話「救出」
・自動車の後部座席で石川にもたれかかって居眠りする立花。挙げ句の果てに所轄の刑事に「流石ですね」と言われてしまう。
・「あー今『容疑者の自殺は行き過ぎた捜査が原因か』って新聞の見出しが浮かんだんだけど」まだ警察の一員になりきれていない比嘉。
・6人殺した自殺した犯人が、7人目の被害者を生かしたまま死に、「24時間以内に見つければ助かる」SPECの第2話も「24時間以内に逮捕すれば警察の勝ち」という話でしたな。
・赤井からの紹介でサイモン&ガーファンクル初登場。「サイ君」「ガー君」と呼んでいるのだな。
・殺人犯の子どもが殺人犯になるわけではない、という比嘉のセリフ。人間は殺人犯に生まれつくのではなく殺人犯になるのだと信じたい。
第3話「連鎖」
・この回は「団地住民の目線」が気になる。
・殺人犯を殺した殺人犯は、同じ罪を負うべきか?というテーマ。
・駿河太郎と鈴木亮平を一瞬混同していた(笑)
・石川「少し前までは、全てが単純だったんだ。犯人がいて、それを俺が捕まえる、それだけでよかった。でも今は違う。いろんなものが見えすぎて、全てが複雑になった。時々、どっちに進めばいいのか分からなくなる」比嘉「暴力は連鎖する」簡単にまとめたね、と思ったら「単純でしょ」って自分で言ってる。
・ガーファンクルの「本物のヒーローは誰の命も奪わない」これBORDERテストの頻出問題だからよく覚えとくように、ね(笑)
・「警察官と違うにおいのする人種」と赤井行きつけのバーのバーテンダー
・便利屋スズキ、初登場
・ルミノール反応で犯行現場を特定するとか、割とディテールはしっかりしている。
・「殺されて当然の人間なんて、絶対にいるわけがない」というのは石川がこの時点で出した答えだが…。
・ここで市倉班長に「あっち側の人間になるなよ」と言われている石川。
第4話「爆破」
・比嘉の遅れを気にする立花。立花「生意気に遅刻なんてしやがって」石川「事故渋滞で遅れてるだけだろ」立花「いいや。あいつのことだからわざとゆっくり走ってるに違いない」市倉「何のために」立花「決まってるじゃないですか。俺への嫌がらせですよ」比嘉が到着して、立花が何か言おうとした瞬間、比嘉「うるさい」息が合ってきた。
・迫力の爆破シーン、をタイトルバック前に持ってきてしまう贅沢。
・比嘉が死んでいたら石川には「見えて」しまっていたのだろうか。
・立花「お前さ、休みのときは何してる」石川「寝てる。お前は?」立花「寝てる」この辺りから立花の変な石川への対抗心が消えているようだ。
・サイ君とガー君の過去が少し分かる。
・この回は意外に死者の姿が出てくるシーンが少なく、地道に証拠集めする刑事ドラマの印象もある。
・「いい天気だな」「そうね」「話すことねえな」「ないね」「倦怠期に入った夫婦みたいだな」「そうだね。でもあんたとは絶対結婚しないけどね」とか夫婦漫才をやっている比嘉と立花の横で、犬猫のように眠る石川の姿も、今見ると悲しい。
第5話「追憶」
・宮藤官九郎が記憶をなくした死者(変な表現だ)・岡部を演じる異色回。
・比嘉と捜査一課三羽烏のやりとり。市倉「ご苦労さん」比嘉「お疲れさまです」石川「オッス」比嘉「オッス」立花「おう」比嘉「(一瞥して無視)」相変わらず立花でオチをつけてくれる。
・比嘉の去り際も、市倉「あいよ(立ち入り禁止テープをあげてあげる)」比嘉「ありがとうございます。じゃあとで」石川「おう」立花「あとでな」比嘉「(一瞥して立ち去る)」そんな比嘉と立花のことを、市倉「だいぶ仲良くなってきたな」石川「そうっすね」
・市倉の、立ち入り禁止テープをあげてあげるシーンと同じことを、石川も岡部相手にやるのだが、市倉や立花からは奇異に見えるという構図。
・タクシーボンネットジャンプ!迫力のアクション。さらに立花は壁ぶち破り!と贅沢なアクション。
・コンビニの防犯カメラの映像を見ながら、立花と合わせて「ビンゴ!」という岡部。
・妻が自分の遺体を見たときに泣き崩れたとき、抱きとめてやれなかった岡部の表情が見もの。
・遊園地に一人で来た石川を何度も振り返るカップル、グッドジョブ。
第6話「苦悩」
・比嘉先生大活躍の回。
・出演が増えてきた鴨川管理官、今回は悪役っぽいキャラ。そしてなぜかいち早く現場に駆けつける。
・比嘉が遺体の兄に「座ってもよろしいですか」と聞いたのと机の端に座った立花に「座るな」と言ったのは対になっているのか。
・なぜか「俺は他の人間には見えないものが見えるんだ」と自信満々な石川。
・ガーファンクルに「すごく疲れた顔をしている」と言われる石川。石川の身の上話。石川の兄が自殺していたことが判明。
・事件は解決したと言えるが、すっきりとした解決とは言えない。次回の衝撃にはかなわないが。
第7話「敗北」
・犬に話しかけている風体で死者と話す石川。比嘉は誰かと話していることに気づいているが、果たして…
・掃除屋が裏で動いていたわけだが、目撃者「刑事さん、私には家族と従業員の生活を守る義務があります」石川「真実から目を背けて得た生活を、あなたの家族や従業員は誇れると思いますか」このときは石川はまだ知らないはず。
・ひき逃げは所轄に任せ、別の事件に当たらせると言った市倉。「何か不満でもあるのか」「いえ、ありません」と言いながら不満ありありな態度の立花。
・ヒーローごっこの話をする市倉。「ヒーローは必要だ。だがな、強すぎるとヒーローは怪人と変わらないんだ。人間じゃなくなっちまうんだ」石川「おれは自分の職務を全うしたいだけです。被害者の無念を晴らしたいだけです」市倉「お前もいつか気づくよ。その強すぎる思いが、お前に関わる人間を全て傷つける」石川「要するに、仕事の手を抜けってことですね」市倉「強い光が射すところには、必ず濃い影も浮かぶんだ。影に飲み込まれるなよ」やがて、影に飲み込まれて行く石川。
・あまり派手なアクションシーンは多くない『BORDER』だが、石川と掃除屋の格闘シーンはスリリング。
・非合法な手段を使って犯人逮捕しようとする石川。やはり壊れている。
第8話「決断」
・いきなり射殺される荒木が、『花子とアン』の葉山蓮子の兄、葉山伯爵役の飯田基祐さんだったのが何とも…
・この回もいち早く現場に現れる鴨川管理官。ドラマのセオリーどおり。
・回を重ねるごとに死者を見た石川を見る比嘉の目が厳しくなっているのだが。
・今回の解剖BGM、Dance Macabre(死の舞踏)。だから何って気がするが。1話とおなじサンサーンスなのね。
・比嘉「どこか体の調子が悪いんじゃない」石川「ハハハッ、至って健康だっけど、どこかおかしく見えるか」比嘉「痛かったら子どものときみたいに泣いていいんだよ。ただひたすら我慢して痛みに慣れてしまうと、本当に大切なところが痛みはじめても気づけなくなるから」石川「泣いたって消えない痛みもある。こっちが望んでいなくても、他人の痛みが次々と襲いかかってくることだってある。そんなときはどうすればいい」比嘉「もっと詳しく話して」石川「…いいんだ。忘れてくれ」比嘉「気をつけて。痛みに支配されないで」石川「分かった。気をつけるよ」このときに本当のことを話していれば…って何度目だ。
・そして、荒木の妻が、『花子とアン』で葉山伯爵の妻役の村岡希美さんであるのに驚く。
・なかなか死者と会話できないシチュエーションってのはちょっとコントっぽい。
・バーテンダー「本当は三人全員知ってるんじゃないですか」赤井「時間をかけて知ったほうがいいこともある」前回の石川の暴走を見ているからなのか、恐ろしい真相を知っているからなのか…
・石川は自分を撃った犯人を逮捕する証拠を探すために、頭の中の弾を取り除く決断をした、と市倉に言う。つまり、自分を撃った犯人が逮捕されることで、頭の中の弾を取り除く必要がないわけだ。石川は、刑事という自らの職務にストイックなのだ。
・石川「俺は絶対正義の階段を踏み外さないぞ」ある意味、登り尽くしてしまった感がある。
第9話「越境」
・前回の「決断」結局手術はしなかったということになる。
・「剣士戦隊ゴケンジャー」のおもちゃで子どもを誘惑する安藤(大森南朋さん)。車に引きずり込んだあとガスを嗅がせた描写がある。
・石川「お兄さんが、弘志君を怖い目に遭わせた悪いやつを絶対に捕まえてやる」弘志「本当?」石川「ほんとうだ。指切りはできないけど約束する」なぜ「指切りはできない」と言ったのかは、死者には触れないから、ということもあるだろうが、相手がいないのに指切りの仕草をしていたら端から見たとき相当変だろう。
・弘志「おもちゃ屋のお兄さん」外見が大森南朋だと「お兄さん」というのにも違和感がある。
・ガーファンクル、報酬を断って、犯人を絶対捕まえるよう石川に言う。ガーファンクル「今日の安吾君、なんかおかしかったね」サイモン「大丈夫かな」
・安藤が務めていた玩具屋の社員も、「最近の若いやつは…」と言うが、外見が大森南朋だと違和感がある。
・比嘉「待って」石川「何だ」比嘉「もしかして、何かおかしなものが見えてる?」石川「ハハハ、おかしなものって何だよ」比嘉「例えば…死者とか」石川「科学者がそんなこといっていいのか」比嘉「そこらへんの頭でっかちと一緒にしないで。この世界にありえないことなんてないの。それを実証していくのが科学者の仕事よ」石川「もし見えてたとしたら、どうだっていうんだ」比嘉「もしそうだとしたら、頭の中の弾が原因の可能性が高いわ。それに見えてはいけないものを見続けているんだから、相当心にダメージが加わっているはず。ねえどうなの」石川「今はこの事件に集中したいんだ。事件が解決したら、きちんと話すよ」比嘉「分かった」石川「心配してくれてありがとう」比嘉「この前も言ったけど、痛みに支配されないで」石川「気をつけるよ」石川、そうやっていつも話を先延ばしにしているから。
・安藤と接触した直後、弘志君を見て、不快な表情を見てしまう石川。弘志の部屋から毛髪を取り出し、工作を依頼する。報酬を断るスズキ。
・安藤、ドアにテープで工作をする。それに気づかずにスズキが弘志の毛髪を安藤の部屋のソファーに仕込む。誰かが侵入したのに気づいてにやりとする安藤。恐らく部屋の中を髪の毛一本残らず掃除したのだろうが、その光景を想像すると恐ろしくなってしまう。
・石川、安藤をわしづかみにして自分の頭を壁に打ち付ける、安藤を公務執行妨害で逮捕する。相当石川は追いつめられているように見えるし、頭の中の弾は大丈夫なのかというのをまず心配してしまう。
・市倉「これまでは大目に見て来たが」確かに過去回で何度も、「今回は大目に
見る」と言っているのだ。
・警察から釈放された安藤と石川が対話するシーンは名台詞のオンパレードと言っていい。安藤「闇があってこそ、光があるんです。悪が存在してこそ、正義も存在する」第7回で市倉が言ったことと全く裏返し。
・赤井「絶対的な悪に勝つためには、絶対的な正義にならなくてはならない。つまり、コインの裏表になるということです。端から見れば、同じものに見えるということです」石川「じゃあどうすればいい。黙って見逃すのか」赤井「相手がしくじるのを待つんです。じっくり、腰を据えて、その間に、闘う知恵も必ず増えてきます。とにかく、焦らないことです」石川「その間に、いくつもの命が消えていってもか」赤井「消えていくものを、必要以上に儚んではいけません。あなたの魂がすり減ってしまいますよ。運命だと思って、あきらめるんです」しかし、石川の魂はもうすり減ってしまっていたのかもしれない。
・焼き場に行った石川、はともかく、石川が焼き場に行くことを察知した比嘉、石川が走り出すのを追いかけかけてやめるが、それでよかったのか。
・衝撃の屋上シーン…は説明不要だろう。とにかく石川の表情に釘付け。